多焦点眼内レンズは本当に見えるのか?

2025/07/20

多焦点眼内レンズは本当に見えるのか?|術後の視力と見え方の実際

はじめに

白内障手術で「多焦点眼内レンズ」を選ぶと、老眼も一緒に治せると聞いたけれど、「本当に老眼鏡が不要になるの?」「見え方に違和感はないの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、多焦点眼内レンズの仕組みや見え方の特徴、術後の実感、そして満足度について、眼科専門医の視点から詳しく解説します。

多焦点眼内レンズとは?

多焦点眼内レンズは、白内障手術で濁った水晶体の代わりに挿入される人工レンズの一種で、遠く・中間・近くの複数の距離に同時にピントが合うように設計されています。

単焦点眼内レンズとの違い

単焦点眼内レンズ: 1つの距離にしかピントが合いません。通常は、遠方もしくは近方のどちらかに焦点を合わせます。焦点が合わない距離は眼鏡や老眼鏡が必須となります。パソコン作業など中間距離での作業をする際は、別の眼鏡が必要になることもあるので、複数の眼鏡を使い分ける必要があります。

多焦点眼内レンズ: 複数の距離にピントが合いますので、手術後はメガネや老眼鏡の使用頻度を減らすことが期待できます。お仕事、趣味、スポーツなどを裸眼で楽しむことが期待できますので、活動的になって若々しい印象もアップ!1度の手術で、白内障、老眼、近視、遠視、乱視を改善できるメリットが魅力的なレンズです。

実際の見え方とその特徴

【メリット】

老眼鏡やメガネなしでも生活できる範囲が広がる
→ 多くの人が、日常生活において老眼鏡を使わなくて済むようになります。眼鏡は視界を狭くしてしまいますので、そういったデメリットからも解放されます。

遠近両用メガネからの解放
→ スマホ・新聞・パソコン操作なども裸眼で可能になる方が多数。

若々しい印象
→老眼鏡やメガネは、その人の印象を変えてしまいます。裸眼での生活が期待できる多焦点眼内レンズは、外見上も若々しい印象を与えてくれます。また、老眼鏡を使用していると、老けた印象的を与えかねませんので、仕事やスポーツを裸眼で楽しむ姿は活発で若々しい印象へとつながります。

【注意点】

光がにじんで見える(グレア・ハロー)
→多焦点眼内レンズで手術を検討している方は、夜間の車のライトや信号などでまぶしさを感じる“ハロー・グレア”を気にされている方が多いと思います。グレア・ハローは、手術に関係なく見える現象でもありますが、長年慣れ親しんできた見え方になるため、特に違和感はないと思います。白内障手術後は、視界もクリアになり、視力も向上しますので、今までの見え方が大きく変化します。この新しい見え方に慣れることで、通常は時間の経過とともに症状が気にならなくなっていきます。

手術後の見え方に違和感を覚える場合も
→手術後は、濁っていた水晶体がクリアなレンズに置き換わるため、視界も明るくなりますし、視力も向上します。とても喜ばしいことですが、長年慣れ親しんできた見え方が、新しい見え方に変化しますので、その見え方に慣れることがポイントです。脳が新しい見え方に慣れるまで、数週間〜数ヶ月かかります。焦らずに普段通り生活することが新しい見え方に慣れる近道でもあります。

医師のコメント

白内障手術は、使用するレンズの種類に限らず“見え方の質”が大きく変わる手術です。単焦点眼内レンズで手術を受けた場合、遠くにピントを合わせた場合は「こんなに近くが見えなくなるなんて」と驚く方もいますし、近くにピントを合わせた場合は「思っていたよりも遠くが見えない」と戸惑う方もいます。一方で、多焦点眼内レンズで手術を受けた場合は、裸眼で快適な生活が送れるようになったが、夜間の見え方や新しい見え方への順応に時間がかかる方もいます。最近では、夜間の見え方が改善されてハロ-・グレアの発症リスクを単焦点眼内レンズレベルまで低減したレンズも登場していますので、多焦点眼内レンズおレベルも確実に向上していると言えます。当院でも、レンズのラインナップを増やしていますので、多くのニーズにお応えできる体制で患者様をお迎えしています。

多焦点眼内レンズが「向いている人・向いていない人」

<向いている人>

  • 老眼鏡に強い不便を感じている方
  • 白内障は軽度だが、老眼で苦労されている方
  • 仕事や趣味で近く・中間距離をよく使う方(PC、読書、料理など)
  • 裸眼での生活を目指したい方
  • 若々しい印象を大切にした方

<向いていない人>

  • 正確な視認が必要な仕事(精密作業・検品など)
  • 極端に乱視が強い方(特殊なレンズ選定が必要)
  • 慎重な性格で、視覚の変化に過敏な方
  • 夜間運転を日常的にする方(レンズの種類によります)
  • 目の病気をお持ちの方で視力の向上が見込めない方

よくある質問(FAQ)

Q. 視力は手術前より良くなりますか?
A. 視力そのものは改善され、かつピントが合う距離も広がります。

Q. どれくらいで見え方に慣れますか?
A. 個人差があります。直ぐになれてしまう方もいますし、少し時間のかかる人もいます。平均すると1〜3ヶ月程度になります。

Q. メガネや老眼鏡は完全に不要になりますか?
A. 多くの方は日常生活でメガネや老眼鏡が不要となりますが、細かい文字や夜間運転時などに補助的に使うケースもあります。もともとの視機能にも関係しますが、無理に見ようとすると眼税疲労の原因にもなりますので、どうしても必要な時にはメガネや老眼鏡を使用することも大切です。

当院では“デメリットを軽減できる”多焦点眼内レンズもご用意

多焦点眼内レンズの中には、「夜間のまぶしさが気になる」「コントラストが低下する」といった従来のデメリットがありました。

冨田実アイクリニック銀座では、最新の設計技術によってこれらのデメリットを最小限に抑えた多焦点眼内レンズを複数取り扱っております。たとえば、回折型と屈折型のハイブリッドレンズや、夜間のハロー・グレアを抑える非球面設計のレンズ、近方から遠方までスムーズな視界が期待できるEDOFタイプのレンズなど、様々なタイプのレンズを取り揃えています。患者様のライフスタイルに合わせて最適なレンズをご提案できるように多くの選択肢をご用意しています。

まとめ

多焦点眼内レンズは、白内障手術と同時に老眼も改善したい方にとって非常に有効な選択肢です。初期の頃は、遠くと近くにピントが合う2焦点レンズしかありませんでしたが、それでも当時は画期的なレンズとして注目されました。

最近では、3焦点、4焦点、5焦点とピントが合う距離も多くなり、近方から遠方までスムーズな視界が期待できるEDOFタイプのレンズなども登場していますので、多くの方が“裸眼での生活”を実感しています。

一方で、新しい見え方に慣れるまでの期間や見え方の特徴を十分に理解して選択することが、術後の満足度を左右します。手術後は、単焦点レンズや多焦点レンズに限らず、何十年と慣れ親しんできた見え方が変わる訳なので、その見え方に慣れるまでは多少の違和感があっても不思議ではありません。
冨田実アイクリニック銀座では、患者様一人ひとりの見え方の希望に応えるべく、多焦点眼内レンズの種類や手術方法を丁寧にご案内しております。お気軽にご相談ください。

監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授