Laser cataract

白内障を治療するには手術しか方法がありません

白内障の初期段階では、点眼薬によって進行を遅らせることができますが、その効果は個人差があります。残念ながら水晶体の濁りをクリアにできるお薬はないため、白内障を治療する方法は手術しかありません。手術は、濁った水晶体を超音波で砕きながら吸い出して、人工の眼内レンズと入れ替える「超音波乳化吸引術が主流となっており、日帰り手術が可能です。また、手術を検討する時期としては、視力に影響が出始めた頃が適切だと言われていますが、白内障が進行しすぎると水晶体が硬くなり、手術のリスクが高くなるだけではなく、通常の手術手技では手術ができなくなる場合がありますので、注意が必要です。最近では、老眼も同時に治療できる多焦点レンズが登場したことで、比較的早い時期に手術を受ける方が増えてきています。

基本的な白内障手術の流れ

  • 前嚢切開

    水晶体を包んでいる水晶体嚢の前側(前嚢)を丸く切り抜きます。
  • 水晶体分割

    水晶体を吸引する前に器具を使って6〜8分割します。
  • 水晶の吸引

    超音波で濁った水晶体を細かく砕きながら吸引します。
  • レンズの挿入

    眼内レンズを嚢(袋)の中に挿入して手術は終了です。

白内障手術は難易度が高く繊細な手術です

白内障手術は、年間に130万件以上も行われているため、比較的容易な手術という印象がありますが、わずか2mmほどの空間で行う非常に繊細な手術です。特に多焦点レンズによる白内障手術は、単焦点レンズに比べて「レンズ挿入までの手術工程」や「レンズのポジショニング」など高い精度が求められます。白内障手術でリスクが生じやすい「前嚢切開」や「水晶体分割」の工程は、わずかな力加減でトラブルの原因となるため、より高い精度が必要です。

白内障手術は2種類の手術方法があります

リスクの高い手術工程をコンピューター制御されたレーザーで行うことができるレーザー白内障手術は、手術による合併症の発生率を医師の手作業によるマニュアル手術の10分の1以下にまで軽減することができます。
      
 

レーザー白内障手術とマニュアル手術

初めてレーザー白内障手術を行った時は、今までの白内障手術とは全く別の手術であるという印象を受けました。従来の白内障手術では、眼の中での手技が多く、どの工程においても医師のわずかな力加減が手術を左右するものでした。手術が上手い医師のことを「ゴッドハンド」や「神の手を持つドクター」と称されることがありますが、「レーザーで神の手を手に入れた」と評した記事を眼科雑誌で読んだことがあり、私も同様のイメージを抱いたことを記憶しています。もちろん、手術の経験やレーザーの操作技術や知識が必要であることは言うまでもありませんが、しっかりと技術を習得し、経験を積んだ医師であれば、レーザーによる白内障手術は、常に安定した手術を提供できると私自身も実感しています。その経験から、白内障が進行し過ぎた特殊な症例でない限り、眼内での手技も少なく、安定した白内障手術を遂行できるレーザー手術を推奨しています。

レーザー白内障手術「Z-CATARACT」の特徴1

見え方の質を左右する重要な手術工程「前嚢切開」

精度の高い前嚢切開が多焦点レンズの性能を最大限に引き出します

濁った水晶体を取り除くために、水晶体を包んでいる水晶体嚢の前側に丸い窓を開ける工程を前嚢切開といいます。レーザー手術では、正確な位置に真円で切開することができますが、医師の手作業によるマニュアル手術では、その精度には限界があり、どんなに熟練した医師であっても丸の形が歪んでしまい、わずかな力加減で合併症のリスクが付きまといます。歪んだ前嚢切開は、眼内レンズの傾きにつながり、手術後の見え方に影響を及ぼすため、前嚢切開は非常に重要な手術工程になります。前嚢切開を正確に行うことは、「多焦点眼内レンズ」や「乱視用の眼内レンズ」といった付加価値の高いプレミアムレンズの性能を最大限に引き出す効果が期待できます。

  • マニュアル手術による前嚢切開

    マニュアル手術による前嚢切開では丸の形が歪んでしまい、嚢が裂けてしまうことがあります。右側の写真は、切り抜いた嚢を青く染色したものになりますが、形状もバラバラで症例によって大きな差が生じ、合併症が発生する原因となります。

    • ●すべての手術工程を医師のフリーハンドで行う
    • ●わずかな力加減で重篤な合併症につながる
    • ●レンズの中心がズレやすく、見え方の質が下がる
    • ●症例や医師の技量によって精度が左右される
  • レーザー手術による前嚢切開

    レーザー手術による前嚢切開では、症例に関係なく正確な真円を描くことができます。右側の写真は、切り抜いた嚢を青く染色したものになりますが、大きさも形状もすべて正確で、挿入したレンズの性能を最大限に引き出します。

    • ●難易度の高い手術工程をすべてレーザーで行う
    • ●わずか数秒で真円の前嚢切開を完了できる
    • ●多焦点レンズの性能を最大限に引き出せる
    • ●常に安定した白内障手術を提供できる

不完全な前嚢切開によるハロー・グレアの発生

マニュアル手術による前嚢切開では、切開位置の中心がズレることがります。白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、空になった水晶体嚢に眼内レンズを挿入しますが、中心位置がズレるとレンズの縁が見えてしまい、この部分に光が当たることでハロー・グレアが発生する要因にもなります。ハロー・グレアの発生は夜間視力に大きな影響を及ぼしますので、正確な位置に適切な大きさで前嚢切開を行うことが、手術後の見え方を左右することになります。レーザー白内障手術による前嚢切開は、正確な位置に切開することができますので、手術後の見え方の質を向上させ、ハロー・グレアの発生を抑える効果が期待できます。

不完全な前嚢切開によるレンズ性能の低下

手術で使用する眼内レンズには、物を見る役割を担う部分(光学部)があり、レンズによって若干の差はあるものの、光学径は約6mmほどに設計されています。マニュアル手術による前嚢切開では、常に同じ大きさに切開することは不可能なため、大きさにバラつきが生じ、レンズを隠してしまう部分が大きくなります。これによって、せっかく白内障手術を受けても、見え方の質が低下し、視界が暗く見えることがあります。レーザー白内障手術による前嚢切開は、適切な大きさで切開することができますので、レンズの収まりが良く、性能を損なうことはありません。

  • 正確な前嚢切開
    正確な位置、適切なサイズの前嚢切開は、レンズの性能を充分に発揮することができます。また乱視の発生やハロー・グレアの症状を抑制します
  • 前嚢切開のサイズ不良
    前嚢切開が小さすぎると、レンズの光学径が大きく隠れてしまい、本来のレンズの性能が十分に得られず、見え方の質が低下する原因になります。
  • 前嚢切開の位置不良
    前嚢切開の中心がズレると、レンズの収まりが悪く、乱視が発生する原因になります。また、レンズの縁に光が反射することにより、ハロー・グレアの原因になります。

不完全な前嚢切開によるレンズの傾きと乱視の発生

マニュアル手術による前嚢切開では、切開する中心位置のズレや、大きさのバラつきによって、眼内レンズの挿入が正確に行えないことがあります。本来は、水平にレンズを挿入しますが、不完全な前嚢切開では、レンズが傾いて挿入されてしまうことがあり、見え方の質が低下するだけではなく、乱視が発生する要因になります。レンズの度数を計算する際は、水平に挿入することを前提に計算されますので、レンズが傾くことで、度数ズレの原因となり、想定していない乱視が発生する原因になります。レーザー白内障手術は、正確な位置に適切な大きさの前嚢切開を行うことができますので、レンズの収まりが良好で、見え方の質も向上します。

  • 正確な前嚢切開
    正確な前嚢切開は水平にレンズが収まるため、不要な乱視の発生を抑え、良好な視界を得ることができます。
  • 前嚢切開のサイズ不良
    不完全な前嚢切開はレンズが傾く原因となり、乱視の発生や見え方の質が低下する原因となります。
  • 前嚢切開の位置不良
    不完全な前嚢切開はレンズの一部が露出してしまうことがあり、乱視の発生や見え方の質が低下する原因になります。
レーザー白内障手術は破嚢率を50分の1以下にまで軽減することができます
レーザー白内障手術は、様々な症例に対して安定した手術を行えることが特徴のひとつです。医師の手作業によるマニュアル手術は、症例や医師の技術や経験によって手術の安定性に差が生じます。進行度合いや発症時期などにより、水晶体の状態も千差万別のため、手術を開始してから対応しなければならないことが多々あります。例えば、白内障が進行しすぎると水晶体が硬くなっていますが、若い時期に発症した白内障は水晶体に柔軟性があり、破嚢のリスクも高くなります。レーザー白内障手術は、様々な症例に対して安定して手術を行うことができるため、医師の手作業によるマニュアル手術よりも、破嚢のリスクは50分の1にまで軽減することができます。

レーザー白内障手術「Z-CATARACT」の特徴2

合併症のリスクを軽減する重要な手術工程「水晶体分割」

正確な前処理が眼内での超音波の使用時間を短縮して合併症のリスクを抑制

濁った水晶体を取り除く前に水晶体を分割する工程が水晶体分割です。医師の手作業によるマニュアル手術では、わずかな力加減で水晶体嚢(水晶体を包む薄い膜)が裂けてしまう後嚢破損のリスクが高く、砕いた水晶体の破片が硝子体の中に落下してしまうことがあり、硝子体手術が必要になることがあります。また、後嚢破損が起こるとレンズが予定の位置に挿入できなくなることがあり、期待していた視力が得られない可能性があります。レーザーによる水晶体分割は、眼内での手技を開始する前に水晶体を細かく分割する前処理を行えるため、超音波の使用時間を大幅に短縮することができ、組織へのダメージや合併症のリスクを軽減します。

  • マニュアル手術による水晶体の分割

    マニュアル手術による水晶体分割では、超音波による吸引前に器具を使用して水晶体を6~8分割しますが、眼内での手技が長くなるため合併症のリスクが高くなります。また、周辺組織へのダメージが生じる可能性も高くなります。

    • ●分割が大きいため超音波の使用時間が長くなり、ダメージが大きい
    • ●わずかな力加減で後嚢破損などの重篤な合併症ににつながるリスクが高い
    • ●超音波によって角膜内皮細胞へのダメージが大きくなると角膜が濁って視力低下を招く
    • ●レンズを挿入できなくなる可能性が生じる
    • ●症例や医師の技量によって精度が左右される
  • レーザー手術による水晶体の分割

    レーザー手術による水晶体分割では、眼内での手技にを行う前に水晶体の分割処理を行います。眼内での作業時間と超音波の使用時間を短縮できることで、合併症のリスクを抑制でき、周辺組織へのダメージを軽減できます。

    • ●正確な前処理によって超音波の使用時間が短縮でき、周辺組織へのダメージが少ない
    • ●わずかな力加減でによる後嚢破損などの合併症のリスクを軽減できる
    • ●超音波による角膜内皮細胞へのダメージを大幅に抑えることができる
    • ●正確な位置にレンズを挿入できる
    • ●常に安定した白内障手術を提供できる

レーザー白内障手術「Z-CATARACT」の特徴3

水晶体の状態を医師が確認しながら手術ができる「OCT機能」

医師がリアルタイムで水晶体を確認できるため高い安全性が確保できる
水晶体の厚さや大きさは症例によって異なります。単純にレーザー手術をするから安全であるとは言い切れません。当院が導入したZ-CATARACTにはOCT機能が搭載されており、患者様個々に異なる水晶体の状態を断面でスキャンすることができ、医師がリアルタイムで確認することができます。このOCT機能により、どこまでの深さで水晶体を分割するか、より安全に手術をするためにセイフティーゾーン(カットしない部分)をどこに設定するかなど、実際の水晶体を断面で確認できることは、高い安全性を確保できる大きなメリットです。

医師の手作業によるマニュアル手術で起こりやすい合併症

医師のフリーハンドによるマニュアル手術では、手術中に起こる合併症の発生率が医師の技量や症例によって左右される一面があります。
白内障手術は、わずか2mmほどの空間で行う繊細な手術であり、手術の安定性に優れたレーザー手術よりも、白内障の進行状態、既往歴、年齢、医師の技量等によって合併症の発生率に影響を及ぼします。あずかな力加減によって合併症を誘発することもあり、眼内の組織が弱っているケースでも合併症に繋がるケースが考えられます。常に安定した高いレベルで手術を遂行できるレーザー白内障手術を選ばれる方が多くなっているのも、こういった安全性の面が大きく影響しています。ここでは、マニュアル手術で起こりやすい主な合併症について紹介します。

不完全な前嚢切開

マニュアル手術による前嚢切開では、チストチャーム(針)や前嚢攝子(ピンセット)を使用して前嚢切開を行います。水晶体を包んでいる水晶体嚢は、薄くて裂けやすいため、きちんとした円にならないことが大半です。切開中に亀裂が入ってしまうことや、裂け目が広がってしまうことがあり、これを「不完全前嚢切開」と言います。前嚢切開によってくり抜かれた窓は、濁った水晶体を吸引する入口になりますが、最終的にはレンズを通して物を見る窓口になります。この前嚢切開が不完全な場合は、レンズの収まりも悪く、見え方の質にも影響します。また、不完全な前嚢切開で手術を行うことは、手術の難易度が高くなり、合併症の発生率も高くなります。

不完全な前嚢切開

マニュアル手術による前嚢切開では、切開中に亀裂が入ってしまうことや、裂け目が広がってしまうことがあり、これを「不完全前嚢切開」と言います。切開中に裂け目ができ、それが嚢の後側まで広がってしまうと、水晶体が眼の中(硝子体内)に落下してしまう恐れがあり、手術の難易度が急激に高くなります。また、水晶体を吸引する際も、常に水晶体の破片が眼の中(硝子体内)に落下する危険性が伴います。万一、水晶体が眼の中(硝子体内)に落ちてしまうと、炎症が起こって眼圧が上昇する危険があり、硝子体手術によって落下した水晶体を取り除かなければならないため、白内障手術よりも大掛かりな手術を受けなければならなくなります。

チン小帯断裂による水晶体の落下

チン小帯は360°に渡って水晶体を支えている組織になりますが、このチン小帯が切れてしまうと水晶体を支えきれなくなって、眼の中(硝子体内)に落ちてしまいます。チン小帯は、加齢とともに弱っていきますので、80代で約50%、90代になると100%の方にチン小帯の衰えが確認できると言われていますが、外傷や落屑症候群、緑内障や糖尿病などの疾患によってもチン小帯が危弱化することがあります。チン小帯が弱いと手術のわずかな力加減で断裂してしまうことがあり、手術の難易度が高くなります。断裂の範囲が小さければ、手術を続行することもできますが、断裂の範囲が広くなると水晶体が丸ごと落下してしまう危険が伴います。水晶体が落下してしまうと硝子体手術によって、落下した水晶体を取り除かなければならないため、硝子体手術が必要となります。最近では、「水晶体嚢拡張リング」を水晶体嚢の中に挿入して補強することも出来るようになりましたが、断裂の範囲が120°以上になると眼内レンズは挿入できなくなります。この場合、レンズを縫い付けて固定する縫着固定や強膜に固定する強膜固定といった方法を用います。

水晶体嚢拡張リング(CTR)
チン小帯危弱やチン小帯断裂が認められる場合、レンズを無理やり挿入してもレンズが傾いてしまい、最悪の場合はレンズを取り出さなければならなくなります。 こういったチン小帯のトラブルがある症例に対して、水晶体嚢拡張リング(CTR)を用いることで、手術の安全性を高めて、レンズの長期的な安定性を保持することができます。 この水晶体嚢拡張リング(CTR)は、日本眼科学会の指導下で実施される講習を受講した医師しか使用できませんが、冨田院長は講習を受講して修了証を授与されていますので、手術中のトラブルにも臨機応変に対応することができます。

後嚢破損による水晶体の落下

白内障手術では、超音波で濁った水晶体を吸引する前に、水晶体を6~8つに分割します。この工程を水晶体分割と言いますが。医師のフリーハンドによるマニュアル手術では、後嚢(水晶体嚢の後側)を破損する危険性があります。レーザー手術では、OCTスキャンによって水晶体を断面で確認して、どの深さまで水晶体を分割するかを設定することができますので、セイフティゾーンを確保することができます。
しかし、マニュアル手術ではプレチップ法という技術を用いて医師の感覚で水晶体を分割するため、器具が水晶体嚢を突き破ってしまう恐れがあります。水晶体嚢の後側を傷つけてしまうと、後嚢破損が起こり水晶体が眼の中(硝子体内)に落ちてしまうリスクが付きまとい、手術の難易度が高くなります。万一、水晶体が落下してしまうと硝子体手術によって落下した水晶体を取り除かなければなりません。また、後嚢破損が起こるとレンズの固定ができなくなることがあり、水晶体嚢の外にレンズを固定する嚢外固定やレンズを縫い付けて固定する縫着固定、強膜にレンズを固定する強膜固定といった手法を用いる必要があります。予定していたレンズが挿入できなくなるケースもあり、手術後の見え方にも大きく影響します。

レーザー白内障手術の費用

レーザー白内障手術 片眼 200,000円(税込価格220,000円)
特に多焦点眼内レンズにはレーザー手術が有効です
レーザ-手術とマニュアル手術では、手術の安全性において大きな違いがあることを理解して頂けたと思いますが、特に多焦点眼内レンズによる白内障手術は、手術の正確性が見え方を左右すると言っても過言ではありません。どんなに詳細な検査を行っても、手術手技がアバウトなレベルでは、正確性を追求することは出来ません。当院では、使用する検査機器はもちろん、手術で使用するレーザーにいたるまで最先端機器を導入していますので、正確性、安全性、安定性に優れた白内障手術を提供しています。 白内障手術をご検討の方は、こういったリスクについても理解いただくことが大切です。