フェムトセカンドレーザーによる「レーザー白内障手術」|白内障手術の次世代技術【医師監修】

2025/07/21

フェムトセカンドレーザーによる「レーザー白内障手術」|白内障手術の次世代技術

はじめに

白内障手術は、長年にわたり医師の手作業によって行われてきました。しかし近年、より安全に、より正確に手術を行うための次世代技術として注目を集めているのがフェムトセカンドレーザーによる「レーザー白内障手術」です。

この記事では、レーザー白内障手術で使用されるフェムトセカンドレーザーの特徴や従来手術との違い、メリット・デメリット、そして導入施設の選び方まで、詳しく解説します。

フェムトセカンドレーザーとは?

フェムトセカンドレーザーは、1兆分の1秒(フェムト秒)という極めて短いパルスで照射できるレーザー装置です。白内障手術においては、合併症のリスクが高い前嚢切開や水晶体前嚢の分割などの工程で使用され、医師の手作業によるマニュアル手術と比較すると、格段に精度の高い白内障手術を提供することができます。

従来の白内障手術との違い

工程 従来のマニュアル手術 レーザー白内障手術
手術手技 医師の手作業 フェムトセカンドレーザーによる手術
前嚢切開 ピンセットによる手動 中央に円形切開をレーザーで実現
核分割 専用の器具で分割 レーザーで安全に分割
精度 医師の技術に依存 機械制御で再現性と正確性を向上

フェムトセカンドレーザーのメリット

・手術の正確性と安全性が格段に向上
フェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術は、リスクが生じる前嚢切開や水晶体分割の工程をすべてコンピューター制御されたレーザーで行うことができます。
手術の正確性はもとより、眼内での手術工程を大幅に減らすことができますので、手術の安全性も格段に向上しています。

正確な前嚢切開

前嚢切開は、水晶体を包んでいる水晶体嚢(薄い膜)の前側を丸く切り取る眼内での工程になります。医師の手作業によるマニュアル手術では、専用の器具を使用して少しずつ切り取っていきますが、その形状は歪で作業の途中で水晶体嚢が破けてしまう「破嚢」という合併症のリスクが存在します。フェムトセカンドレーザーを使用すると、水晶体嚢(前嚢)を円形に正確に切開することができます。眼内での作業ではなく、目の外側からのアプローチになりますので、合併症のリスクを大幅に軽減できます。前嚢切開はレンズを挿入する入り口を作る工程になりますが、最終的にはレンズを通して物を見る窓口にもなります。この前嚢切開の工程を正確に行うことは、眼内レンズの安定性を大きく向上させることに直結します。

安全な水晶体分割

濁った水晶体を超音波で吸引する前に、水晶体を6~8つに分割する工程を水晶体分割といいます。今までのマニュアル手術では、専用の器具を使用して医師の手作業で行われてきましたが、わずかな力加減で水晶体嚢が破れてしまう「破嚢」が発生するリスクがありました。
当然、目の中の作業になりますので、その分リスクも高くなります。フェムトセカンドレーザーによる水晶体分割は、目の外側からのアプローチになりますので、眼内での作業は必要ありません。どの深さまで分割するかもコンピューターが制御していますので、水晶体の分割も正確で安全におこなうことができます。

軽度の乱視矯正にも有効

乱視の強い方には乱視用のレンズも用意できますが、軽度な乱視の場合は、フェムトセカンドレーザーで矯正することもできます。角膜を精密に切開できるため、術中に乱視を軽減できるメリットがあります。

眼内レンズの性能を最大限に活かせる

フェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術は、特に多焦点眼内レンズとの相性が良く、術後の「見え方の質」を追求したい方に最適です。多焦点眼内レンズは、レンズの中心位置を正確に合わせる必要があり、シビアなポジショニングが要求されます。フェムトセカンドレーザーによる精度の高い手技によって、多焦点眼内レンズの性能を最大限に引き出すことが期待できます。

手術によるダメージ軽減

目の中の作業が多いほど、白内障手術のリスクは高くなります。フェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術には、眼内での作業を大幅に減らすことができるというメリットがあります。目の中の作業を少なくすることは、それだけ手術のリスクを低減させる効果に直結します。

術後の回復がスムーズ

フェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術は、眼内での作業を少なくできるだけではなく、余計な力を必要としないため、手術による負担が少ないことが特徴の一つでもあります。これによって、術後の炎症や視力回復が早まる傾向があります。

デメリットと注意点

・レーザー白内障手術は自由診療となりますので健康保険の対象外となります

冨田実アイクリニック銀座の場合レーザー白内障手術費用(片眼):220,000円(税込)※多焦点眼内レンズ代金は別途

・導入施設が限られている
フェムトセカンドレーザーを導入するには高額な設備投資が必要なため、すべての眼科で受けられるわけではありません。逆に、フェムトセカンドレーザーを導入している施設のほうが圧倒的に少ないのが現状です。

操作には高度な技術が必要
フェムトセカンドレーザーを活用するには、操作方法、データ設定、照射レベルなど熟練した医師の経験が求められます。レーザー機器があっても、しっかりと使いこなせなければ、良好な結果はきたいできません。

医師のコメント(冨田実院長)

「フェムトセカンドレーザーは、白内障手術の質を次のステージに引き上げる革新的な技術だと言えます。従来と比べて格段に安全性・正確性が高く、多焦点眼内レンズの性能を最大限に引き出せる点が特に魅力です。手術後のQOL(生活の質)を重視される方には非常におすすめです。」

対象となる方

以下のような方には、フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術がおすすめです。

  • 乱視の矯正も同時に希望している
  • 多焦点眼内レンズで高精度な手術を希望
  • 安全性と正確性を第一に考えたい
  • 術後の「見え方の質」にこだわりたい
  • 進行してしまった白内障を安全に手術したい

よくある質問(FAQ)

Q. レーザー照射中は痛みはありますか?
A. 点眼麻酔で行うため、レーザー照射中も痛みはほとんどありません。

Q. すべての白内障に使えますか?
A. 過度に進行してしまった症例など、一部適応外となる症例もあります。事前の精密検査と医師の判断が必要です。

Q. 手術時間は長くなりますか?
A. 機器設定や操作時間が加わりますが、医師の手作業よりも短時間で必要な手技を行うことができますので、それほど手術時間は変わりません。手術時間は変わらなくても、手術の精度と安全性が向上しますので、メリットは大きいと思います。

まとめ

フェムトセカンドレーザーを使用したレーザー白内障手術は、「より安全に、より正確に、より高い満足度を得たい」という方にとって、革新的な選択肢です。特に高い正確性が要求される多焦点眼内レンズで手術を検討されている方にとっては、有効な手術手技であることは間違いありません。

冨田実アイクリニック銀座では、フェムトLDV-Z8というフェムトセカンドレーザーを導入して、レーザー白内障手術「Z-CATARACT」を提供しています。
患者様お一人おひとりの眼の状態やご希望に応じて、最適な治療法をご提案しています。

白内障の進行が気になる方、手術の安全性を重視される方、多焦点眼内レンズによる白内障手術をご検討中の方は、どうぞお気軽にご相談ください。

監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授