白内障手術を受けるベストなタイミングとは?|見逃しがちなサインと医師の判断基準【医師監修】
白内障手術を受けるベストなタイミングとは?|見逃しがちなサインと医師の判断基準
はじめに
白内障と診断されたとき、多くの方が最初に抱く疑問は「今すぐ手術が必要なのか?」ということです。視力は日常生活に直結するため、手術のタイミングを見極めることは非常に重要です。この記事では、白内障手術を受ける最適なタイミングや、見逃されがちなサイン、そして医師がどのような基準で判断しているのかについて、専門的な視点から詳しく解説します。
白内障手術の目的と基本的な判断基準
白内障手術は、濁った水晶体を人工の眼内レンズに置き換えることで視力を回復させる治療法です。治療のタイミングは、「白内障によって生活に支障が出ているかどうか」が一つの大きな判断基準になります。
手術を検討すべき症状のサイン
以下のような症状が現れ始めたら、手術を検討する段階に入っている可能性があります。
- 眼のかすみを実感するようになった
- 光を眩しく感じるようになった
- 細かい文字が見づらくなった
- 視力が低下している
- 色の識別がしづらくなった(色がくすんで見える)
- 新しい眼鏡でも視力が改善されない
これらの症状は、白内障が進行してきているサインであり、放置すると事故や転倒の原因になることもあります。また、眼精疲労の原因にもありますので、症状を自覚した時は、眼科を受診して目の状態を確認しておきましょう。
視力だけでは判断できない「見え方の質」
視力検査の結果が良好であっても、実際の「見え方」に不快感がある場合は注意が必要です。白内障では視界のコントラストが低下し、ぼやけたり、光が拡散してまぶしく感じたりすることがあります。
「例えば1.0の視力があっても、“ぼやけて見える”“まぶしい”という自覚症状があれば、手術の適応になるケースは少なくありません。視力検査のデータや患者さんの年齢だけで判断するのは間違いです。患者さんが自覚している症状や生活スタイルに合わせた判断が必要です。」
白内障を放置するとどうなる?
白内障は、自然に治癒することはありません。治療法は「白内障手術」しかありませんので、適切な時期に手術を受けることが重要です。日本では考えられないかもしれませんが、世界的にみると、実は白内障が失明原因の第1位にランクされています。これは、発展途上国などで、「十分な治療を受けられなかった」「治療を受けられる施設がない」「治療費を準備できない」「医療水準が低い」といた理由からです。日本における白内障による失明率は3%と非常に低くなっていますが、白内障を放置したことが主な原因です。
進行を放置すると以下のようなリスクがあります:
- 水晶体が硬化して手術の難易度が上がる
- 視力が低下し、転倒や事故のリスクが高まる
- 緑内障やぶどう膜炎などを併発する
- 通常の手術手技では対応できなくなる
- 眼内レンズの選択肢が限られてしまう
また、白内障が進みすぎると眼内の観察が難しくなり、他に目の病気があっても見逃してしまう可能性も高まります。また、水晶体の濁りが強くなると、白内障手術に必要な検査もできなくなりますので、手術の結果も期待できなくなります。
手術のタイミングは「患者の生活の質」に合わせて
手術を受けるベストなタイミングは、患者さんの年齢や医学的な判断だけでなく、患者さんがどれだけ生活に不便を感じているかが大切です。手術を検討する適切な時期は、白内障の症状自覚した時と覚えておくとよいでしょう。特に以下のようなケースでは、早めの手術が推奨されます:
- 現役で仕事をしていて、視力が業務に支障をきたしている
- 趣味(ゴルフ、手芸など)を快適に楽しめなくなった
- 多焦点眼内レンズで老眼の治療を希望している
- 夜間の運転に支障が出てきた
白内障と同時に老眼も治療できる「多焦点眼内レンズ」
白内障が軽度でも老眼で苦労されている方も少なくありません。最近では、白内障と老眼を同時に治療できる多焦点眼内レンズが注目されていますが、1度の手術で白内障と老眼を治療できるため、老眼で苦労されている方は、早い時期に手術を済ませてしまう傾向があります。当院では、多焦点眼内レンズをメインで白内障手術を行っていますが、手術を受けられている患者さんを年代別にみると、50代で30%、60代で30%、70歳以降で40%と、比較的早い時期に手術を済まされる方が多くなっています。
白内障手術を受ける時期に関するQ&A
当院ではライフスタイルに応じた手術時期をご提案します
冨田実アイクリニック銀座では、患者さまの目の状態やライフスタイル、見え方の悩みに応じて、最適な手術時期を医師が丁寧にご提案いたします。また、白内障が軽度でも老眼で苦労されている方も多く、多焦点眼内レンズによる白内障手術を希望される方が増えてきています。レーザー白内障手術など、高度な技術を用いた治療も行っておりますので、「まだ早い」と感じている方も、まずは一度ご相談ください。
まとめ
白内障手術のタイミングは「視力の数値」だけでなく、「見え方の質」や「生活への影響」「老眼との兼ね合い」などを総合的に考慮することが大切です。症状が軽くても、自覚症状が強い場合や、生活に不便を感じている場合は、早期の手術がより良い結果につながります。後回しにするほど手術の難易度やリスクは上がりますので、違和感を覚えたら早めの受診をおすすめします。
監修者

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「白内障は命に関わる病気ではありませんが、進行すると視界が大きく制限され、日常生活の質が著しく低下します。視力検査の数値だけではなく、『見えづらい』『まぶしい』といった自覚症状がどれだけ生活に影響しているかを重視しています。」白内障を放置すると、緑内障やブドウ膜炎を併発することもあり、失明に至る危険もあります。