単焦点レンズにすべきか、多焦点にすべきか悩んだら|それぞれのメリット・デメリットを徹底比較【医師監修】
2025/07/01
単焦点レンズにすべきか、多焦点にすべきか悩んだら|それぞれのメリット・デメリットを徹底比較【医師監修】
はじめに
白内障手術を受ける際、眼内レンズ(IOL)の選択は非常に重要な判断ポイントです。特に「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」のどちらを選ぶべきかで悩まれる方は多くいらっしゃいます。
この記事では、それぞれのレンズの特徴や違い、どのような方に向いているのかを、眼科専門医の視点も交えながら分かりやすくご紹介します。
単焦点レンズとは?
単焦点レンズは、遠く、または近くのどちらか一方に焦点を合わせる構造になっており、長年にわたり多くの症例で使用されてきた標準的なレンズです。
主な特徴
- 焦点は一か所(遠方または近方)に固定
- 公的保険が適用され、費用負担が軽減できる
- 見え方が安定し、手術後のトラブルが少ない
- 手術後は老眼鏡や遠近両用メガネが必要な場合が多い
- 白内障しか治療することができない
多焦点レンズとは?
多焦点レンズは、1枚のレンズに複数の焦点があり、遠方・中間・近方にピントを合わせることができる設計になっています。
主な特徴
- 白内障と同時に、老眼、近視、遠視、乱視を改善することができる
- 老眼鏡やメガネに依存しない生活が期待できる
- 見える範囲が広く、遠近のピントが自然に切り替わる
- 自由診療のため費用が高額(片眼30~60万円程度)
- 単焦点レンズよりも夜間に光がにじんで見える(グレア・ハロー)現象が出ることも
医師のコメント:
最近では、白内障手術を老眼改善のチャンスと捉え、多焦点レンズを選ぶ方が増えています。レンズの進化により、以前よりも見え方の快適性が向上しており、生活の自由度を重視する方にとって非常に魅力的な選択肢です。また、多焦点レンズは老眼の治療としても選択できますので、早い時期に手術を済まされる方が増えてきています。白内障手術は、いずれ受けなければならない手術になりますので、多焦点レンズは老眼で苦労されている方にとって新しい治療の選択肢として認知されてきています。
それぞれのレンズ、どちらを選ぶべき?
レンズの選択は、ライフスタイルや見え方の希望、費用面を総合的に考慮する必要があります。
単焦点レンズが向いている方
- 費用を抑えたい方(保険適用)
- メガネの使用に抵抗がない方
- 夜間運転や細かい作業が多い方
- 安定した見え方を重視したい方
多焦点レンズが向いている方
- 老眼鏡やメガネへの依存度を減らしたい方
- 老眼に不便を感じている方
- アクティブに過ごしたい方(旅行・スポーツ・趣味・仕事など)
- スマホやPC作業が多い方
よくある質問(FAQ)
Q1. 多焦点レンズは本当にメガネなしで生活できますか?
はい、多くの方が日常生活をメガネなしで快適に過ごされています。読書・スマホ・運転などの幅広いシーンで、メガネに頼らず生活できるようになったと実感される方が大勢いらっしゃいます。細かい作業や夜間環境では補助的にメガネを使うこともありますが、全体として自由度の高い視界が得られます。
Q2. 多焦点レンズは誰にでも合いますか?
多くの方にご満足いただいていますが、目の状態や視機能によっては慎重な判断が必要です。当院では適応検査を通じて、患者様一人ひとりに最適なレンズかどうかを丁寧に見極めていますので、安心してご相談いただけます。
Q3. 途中でレンズの変更はできますか?
原則として挿入したレンズはそのまま使用します。レンズを交換するということは、挿入されているレンズを抜かなければなりません。レンズを取り出す処置はリスクを伴いますので、積極的にお勧めはしていません。
Q4. 自分に合ったレンズを選ぶには?
術前の綿密な検査データをもとに、医師による診察を行います。その際、カウンセリングによって、ご自身のライフスタイルや見え方の希望に応じて、最適な選択ができるよう、患者様に適したレンズをご提案しています。
医師からのアドバイス
白内障手術で使用する眼内レンズを選ぶときは、普段の生活スタイルやお仕事、趣味の内容をもとに、総合的に判断することが大切です。また、ご予算も重要な検討課題になると思います。当院では、多焦点眼内レンズによるレーザー白内障手術をメインに治療を行っていますが、多焦点眼内レンズにも様々な種類がありますので、適応検査の結果をもとに、患者様に最適な選択をご提案しています。
まとめ
白内障手術におけるレンズ選びは、「見え方の質」と「生活の快適さ」を左右する重要なポイントです。
単焦点レンズは保険適用で費用を抑えられるのが魅力です。一方で、多焦点レンズは、より自由な見え方を実現できる先進的な選択肢です。ただし、後からレンズを交換することは高いリスクを伴いますので、「見えづらかったら、単焦点レンズから多焦点レンズに交換すればいいや」といった安易な考えは禁物です。手術後の生活も視野に入れてレンズを選ぶことがポイントになります。
どちらが自分に合っているか迷ったときは、ぜひ眼科専門医にご相談ください。