白内障手術しないとどうなる?|白内障放置の末路と進行シミュレーション【医師監修】
手術しないとどうなる?|白内障放置の末路と進行シミュレーション【医師監修】
はじめに
「まだ見えるし、手術はもう少し後でもいいかな…」
そんなふうに白内障の手術を先延ばしにしている方は少なくありません。
しかし、白内障は自然に治ることはなく、放置してしまうことで思わぬリスクを招くことがあります。この記事では、白内障を手術せずに放置した場合の進行シナリオとリスクについて、眼科専門医の視点で詳しく解説します。
白内障は進行性の病気です
白内障とは、水晶体が白く濁って視界がかすむ病気です。一般的な加齢性の白内障は、水晶体の周辺から濁りはじめ、徐々に中心に向かって濁りが進行する傾向があります。そのため、初期段階では日常生活にそれほど支障が出ないこともありますが、進行とともに症状は悪化していきます。
主な進行の流れ:
初期:やや見えづらい、光がまぶしく感じる
中期:視力が明らかに落ちる、色がくすんで見える
後期:視界全体が白く濁り、日常生活に支障
過熟期:水晶体が完全に白濁し、失明に近い状態に
放置した場合に起こるリスク
1. 日常生活の質が低下する
白内障が進行すると、読書やテレビ視聴、料理、買い物、運転など、あらゆる行動に支障が出ます。特に高齢者にとっては、「外出機会の減少 → 筋力・認知機能の低下 → 介護状態のリスク増大」といった悪循環に陥る可能性もあります。
2. 転倒リスクが高まる
視界の歪みや暗所での視認性の低下により、段差や階段での転倒が増えます。高齢者の場合は骨折、怪我、寝たきりにつながる危険があります。
3. 緑内障やブドウ膜炎の併発
白内障が重度になると、眼内圧が上昇し「続発緑内障」を引き起こす場合があります。また、水晶体の内容物が漏れ出すと「ブドウ膜炎」などの炎症が起こることも。
4.手術に必要な検査ができない
白内障が進行して水晶体の濁りが強くなると、手術に必要な検査ができなくなってしまいます。水晶体の濁りが強いと目の中に光が通らなくなるため、眼科での検査が思うようにできなくなります。そのため、レンズの度数ズレが起きやすく、手術後の視力に大きく影響します。
5.目の病気が発見できない
水晶体の濁りが強くなると、目の中の視認性が低下します。目の病気は自覚症状が乏しため、病気を発見するためには検査や医師の診察がとても重要です。しかし、水晶体の濁りで目の中が確認できないと、何か病気を発症していても発見が遅れてしまう原因になります。
6. 手術の難易度が上がる
白内障が進行すると水晶体が固くなってしまいます。水晶体が硬くなりすぎると、手術に使う超音波装置で水晶体を砕くことが難しくなります。その結果、手術時間が長引き、角膜や網膜への負担が増えることで、合併症のリスクも上がります。
7.レンズの選択肢が限られてしまう
水晶体が固くなると、通常の手術手技では対応できなくなることもあります。超音波装置で水晶体を砕くことができない場合は、水晶体を丸ごと摘出しなければならなくなることもあります。当然、レンズの選択肢も限られてしまいますので、術後の見え方に大きく影響します。
医師のコメント
「まだ見えるから大丈夫」と思っている間に、白内障は静かに進行します。特に“急に見えにくくなった”と感じたときは、すでに中期〜後期に進行していることも少なくありません。また、白内障と老眼が重なる時期もあるため、自分が白内障だと気づかない場合もあります。
老眼だと思っていたら“実は白内障だった”というケースも少なくありません。目の手術はタイミングが非常に大切なので、違和感を感じた時は、眼科を受診して目の状態を確認しておきましょう。
進行シミュレーション:手術をせずに5年経過したら?
経過年数 症状例 生活への影響
1年目 少し見えづらい/光がまぶしい 本や新聞が読みづらくなる
2年目 視力が0.5未満に 眼鏡でも矯正しきれない
3年目 視界が白っぽく、色がくすむ 外出や運転が不安になる
4年目 視力0.2以下/両眼に進行 読書・家事・移動に強い支障
5年目 完全白濁(過熟白内障) 手術が難航、視力回復も困難に
※進行スピードには個人差があります
よくある質問(FAQ)
Q. 完全に見えなくなってからでも手術はできますか?
A. 可能ではありますが、通常の手術手技では対応できないケースもあり、水晶体を全摘出しなければならないケースもあります。手術のリスクも高くなりますし、レンズの選択肢も限られます。また、手術に必要な検査も思うようにできなくなるため、手術後の視力向上は期待できません。早期のほうが安全かつ良好な視力が得られやすいです。
Q. 自覚症状がないのですが、進行している可能性は?
A. はい。ゆっくり進行するため、本人は気づきにくいことがあります。特に、加齢性の白内障は、水晶体の周辺から濁りはじめ、徐々に中心に向かって濁りが進行する傾向がありますので、初期段階では自覚症状がありません。年1回は定期検診を受けることが理想です。
Q. 老眼と白内障の区別がつきません
A. 老眼はピントが合いにくくなるだけですが、白内障は光がにじんだり、視界全体が白くなるのが特徴です。老眼と白内障が重なる時期もありますので、余計に見えづらくなることも。不安な方は眼科で検査を受けましょう。
まとめ
白内障は進行を止めることができず、放置すると生活の質を大きく損なう病気です。さらに手術の難易度や合併症のリスクが高くなりますので、適切な時期に手術を受けることが、とても重要です。「まだ見えるから大丈夫!」と思っても、それは“今が手術のベストタイミング”かもしれません。後悔しないために、見え方に少しでも変化を感じたら、早めに眼科専門医に相談しましょう。
監修者

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